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温暖化緩和策がもたらすエルニーニョの頻発化

2025年6月17日更新

【ポイント】

  • 気候モデルによりCO2削減時にエルニーニョが短周期化頻発化する可能性があることが分かりました。
  • CO2緩和は地球温暖化を抑制する一方で、エルニーニョの活発化を通して地球全体での異常気象の発生頻度の増加に寄与する可能性があります。
  • 温暖化のみならず気候緩和政策に向けたシナリオのリスク評価を併せて行う必要があることを示します。

【概略】

お茶の水女子大学の岩切友希日本学術振興会特別研究員(兼当時ソウル大学校ポスドク研究員)およびソウル大学、ハワイ大学等の国際共同研究チームは、熱帯の気候変動であるエルニーニョ現象(用語1)が温暖化緩和政策を想定したCO2削減時に頻発化?短周期化することを明らかにしました。

大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の増加に伴う地球温暖化の影響に対して、CO2削減時の気候影響に関する研究は未だ理解が進んでいない領域です。気候システムが複雑であることからCO2濃度の増加時と減少時の応答が線形(対称的)であることは保証されていません。したがって将来的な気候緩和政策に向けた緩和影響に関する研究の重要性が指摘されていました。

本研究は気候モデル(用語2)にCO2除去シナリオ(用語3)を与えた数値実験を解析した結果、温暖化が十分に進んでしまった場合、CO2が削減されたとしても不可逆な気候応答(用語4)により新たな気候リスクが生じることを示唆しています。CO2濃度の低下は地球の平均気温を下げることで温暖化を緩和する一方で、世界中で異常気象を引き起こすことで知られている熱帯の海面水温変動 - エルニーニョ現象 - は短周期化?頻発化する可能性があります(図1)。図よりCO2濃度の増加速度と減少速度は実験内で線形対称であるのに対して、熱帯の様々な気候変動はCO2削減時に大きく応答しており不可逆であることが分かります。

Fig1
図1 理想化されたCO2緩和シナリオでの時間変化
CO2強制(黒線)、全球平均気温の変化量(赤線)、熱帯収束帯の中心緯度(緑線)、エルニーニョの南北幅(紫線)、エルニーニョの発生頻度の変化量(青線)。下図、ウェーブレット解析による熱帯太平洋の海面水温偏差のパワーの周期依存性。暖色が強いほどその周期のパワーが強いことを示す。

このエルニーニョ現象の不可逆応答は、温暖化によって停止することが懸念されている大西洋子午面循環(用語5)や南極海の遅れた応答に起因しています。これら極域での変動が北半球と南半球のエネルギーバランスを崩すことで、熱帯赤道域に位置する降水帯(熱帯収束帯; ITCZ、用語6)の中心緯度を南下させ、それに伴い大気海洋相互作用が変調することでエルニーニョの周期に変化をもたらします(図2)。この結果は気候システム上に存在する非線形システムによる応答は、地球全体に波及する可能性があることを警鐘しており、より早い段階で温暖化を抑制することが重要であることを示唆しています。CO2除去を含む気候緩和策にはさらなる気候リスクを生じさせる可能性があることから多様な気候緩和シナリオを用いた研究が進展することが期待されます。

Fig2
図2 CO2緩和時の全球に波及しうる不可逆な気候応答
陰影はCO2緩和期間と増加期間の地表気温の差。北大西洋では大西洋子午面循環が弱化することで気温がより低く、南極海では温暖化の緩和速度が遅いことで昇温が残る。両極の気温コントラストにより熱帯収束帯が暖かい南側にシフトする。熱帯収束帯とエルニーニョの相互作用によりエルニーニョが頻発化する。

本成果は、米国科学アカデミーが発行する「Proceedings of the National Academy of Sciences」で掲載される予定です。また本研究は日本学術振興会(JP23KJ2168),および気候変動予測先端研究プログラム(JPMXD0722680395)の支援により実施されました。

【発表論文】

題目: Abrupt shift of El Niño periodicity under CO2 mitigation
雑誌: Proceedings of the National Academy of Sciences
DOI:10.1073/pnas.2426048122
著者: 岩切友希1,2, Jong-Seong Kug2, Fei-Fei Jin3, Sen Zhao3, Soon-Il An4, Geon-Il Kim5, Dongkyu Park2
所属:1.お茶の水女子大学、2.ソウル大学校、3.ハワイ大学、4.延世大学、5.トロント大学

【用語】

1. エルニーニョ現象(ENSO; El Niño-Southern Oscillation)
熱帯東部太平洋の海面水温が高温、低温になる現象。3~8年の周期で繰り返し発生し、熱帯の降水パターンを変化させることで地球全体に影響を及ぼす。
2. 気候モデル(Global Climate Model)
大気、海洋、陸面などをコンピュータ内で再現することで仮想的な地球の環境を数値的にシミュレーションする実験道具。
3. CO2除去シナリオ(CDR; Carbon dioxide removal)
気候モデル内の仮想的な地球の大気中CO2濃度を年間1%の割合で増加していき、4倍の濃度に達した時点で1%/年の割合で減少させていく実験(図1黒線)。CO2の増加期間と減少期間は、理想的な温暖化シナリオと緩和シナリオに対応する。CO2濃度の増加率と減少率は同じであるため、対称なCO2濃度の変化からどのような気候の非対称な(不可逆)応答が生じるかを調べられる。
4. 不可逆な気候応答(Irreversible climate response)
気候の変化が強制(本研究ではCO2)に対して元の状態に戻らないこと - 逆向きの変化を辿らない。
5. 大西洋子午面循環(AMOC; Atlantic Meridional Overturning Circulation)
大西洋に存在する海洋の深層循環。温暖化に伴い弱化しており将来的に停止することで急激な気候変化をもたらす可能性がある。
6. 熱帯収束帯(ITCZ; Intertropical Convergence Zone)
赤道付近に存在する降水ベルト。その中心緯度は南北のエネルギーバランスでおおむね決まっており、現在気候では陸面が多く気温の高い北半球側にずれている。

詳細はこちら(PDF形式645キロバイト)


【問い合わせ先】

【研究に関する問い合わせ先】
お茶の水女子大学 基幹研究院 日本学術振興会特別研究員-PD 岩切友希
E-mail: iwakiri.tomoki@ocha.ac.jp

【取材に関する問い合わせ先】
お茶の水女子大学 広報?ダイバーシティ推進課(広報担当)
電話:03-5978-5105
E-mail: info@cc.ocha.ac.jp